■*ふたりならきっと平気/気まぐれ書き下ろし短編

8/8
前へ
/698ページ
次へ
「……ああ、正直今でも苦手だ」  吐息まじりに言えば、 「子供の頃はお兄ちゃんが私たちのこと、ギュッて抱きしめてくれたもんね」  そう。  幼い頃は雷が鳴るたび、「しゃあねぇなぁ」って言いながら、奏芽(かなめ)音芽(おとめ)だけでなく、俺のことも一緒に音と光から庇うように抱きしめてくれて。  まるで雷鳴から守るみたいにしてくれたんだ。 『ハル、これからはお前が音芽(おとめ)を守ってやれよ?』  音芽との結婚を決めて間もない頃、奏芽(かなめ)にそんなことを言われて頭をポンッと軽く叩かれたことがある。  あれは、こう言うことも含めてのことだったんじゃないかと今更のように思い至って。 「けどさ。俺らもいつまでもガキのままじゃねぇじゃん? 今はふたりでくっ付いてりゃ怖くねぇだろ」  例え2人とも雷が苦手だとしても。  俺はお前がいるから乗り越えられるし、お前もそうだろ?  ――な、音芽。ふたり一緒なら。きっと何だって平気、だよな?     END(2021/07/15)
/698ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3103人が本棚に入れています
本棚に追加