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「ああ、可愛いな」
俺が同意することを心待ちにしている音芽の潤んだ瞳に負けて、俺はそう答えて。
だけどな、音芽。
俺が今、可愛いって言ったのは画面の中の子猫に対してなんかじゃねぇんだよ。
「可愛すぎて、力任せに抱きしめたくなってやべぇレベルだわ」
それこそ力の加減が出来ないぐらいに強く。
「あー、それ分かるっ! あんまり可愛いと力一杯ムギュゥ!ってしたくなっちゃうよね」
俺の方を見て、「ホント、その衝動を抑えるの、たいへぇ〜ん」と付け加えながらニッコリ笑う音芽に、俺はとうとう我慢が出来なくなった。
「バカ音芽」
舌打ちとともにそう言って、スマホを持ったままの音芽の手をグッと引っ張ると、「ひゃぁっ」という悲鳴とともに、音芽の小さな身体を腕の中に閉じ込めた。
「温和、痛、いよぅ……」
俺の胸元。
身動きでないぐらいに力強く押さえつけられた音芽から、くぐもった抗議の声が聞こえてくるけれど、悪いな。
「お前が可愛すぎて力の加減が出来ねえんだよ。ちょっと我慢しろ」
だってお前もさっき言っただろ?
この衝動を抑えるのは大変だって。
だからもうちょっと、このまま俺に抱かれてろ!
END(2021/08/10)
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