3103人が本棚に入れています
本棚に追加
温和は、私のそういうズルさに腹を立てていたのかもしれない。
だから、兄と思われることを頑なに拒み始めたのかな。
もしかしたら嫉妬してくれてるんじゃないかな？とか期待してしまっていたけれど、そう思った自分が本当に愚かに思えてきて、段々と温和に「嫉妬？」とか聞いてしまった自分が恥ずかしくなってきた。
ごめん、温和。きっと馬鹿なこと言うやつだ、って思ってたよね。何でヤキモチだって肯定してくれないの？って腹立たしく思っていたけど、逆に否定せずにいてくれたのは温和なりの優しさだったのかもしれないと気づいた。
貴方が私の行動に嫉妬なんてするはずないもの。
ただ、私のやることなすことにイライラしていただけなんだ、きっと。
鶴見先生に対して思わせぶりな態度を取っていることも、温和に対してどっちつかずの対応をしていることも。
温和と付き合ってもいないくせに、お仕置きだのなんだのという曖昧なもので簡単に身体に触れさせて、あまつさえ拒めなかったことも、もしかしたら軽蔑されていたかもしれない。そう思ったら、恥ずかしくて堪らなくなった。
どんどん温和の行為がエスカレートしたのは……私を試していたのかも。
私は窓外を見つめながら、ギュッと拳を握りしめた。
私、鶴見先生の申し出を受けよう。
そうすれば、温和にも、付き合っているわけじゃないのに、そういうことはしないで欲しいってちゃんと言えるようになるよね。
私、彼氏が出来たから……もう触らないでって。
そう決意したら、結果的に温和への気持ちに蓋をすることになったからかな。胸の奥がちくっと痛んで……鼻の奥がツン、とした。
でも……これはきっと自業自得――。
そう思うのに、景色が涙でぼんやり霞んで見えた。
最初のコメントを投稿しよう！