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スーパーを後にした雪子は、息子が通う小学校へ向かった。
年度内に行われる運動会と学芸会の話し合いへ参加するためだった。
SLK350を駐車場に停めると軽くアクセルをふかしてからエンジンを止めた。
それに気づいた主婦がドアから出てきた。
「ユッキんさん、お待ちしてました」
「奥さん、『ユッキん』はやめて。みんなと同じたかくんママでいいのよ」と子供の名前にパパやママを付けた、子供同士が呼ぶ呼び方で自分を呼ぶように笑顔で伝えた。
二人で校舎に入る。
すれ違った教師が笑顔で頭を下げて通り過ぎたが、廊下の角を曲がるとあからさまに嫌な顔をして舌打ちした。
会議室に入ると、校長が自分の隣の席へ促した。
「さぁ、こちらへどうぞ」
校長を挟んで2席隣に座る体育教師が見えないように眉間にシワを寄せる。
争いごとは良くない。
得意な子と不得意な子の間に差が出来てしまう
イジメに繋がる
差別になる
体育の苦手な雪子の息子が笑いものにならないように言っているようにしか、体育教師には聞こえなかったが、昨今のPTAは親が強い。
親と教師の間に平等は存在しない。
しかもテレビでコメンテイターを務めるような、カリスマ主婦と呼ばれる存在だ。
「ピラミッドなんて下で地面に手を突く子が可愛そうだと思いませんか?」
「そもそも、運動会って大人になっても必要な筋力とはかけ離れていますよね?」
「ガイヤくんなんて、足を怪我しているのに玉入れに駆り出されて。親としては心配ですよね?」と街夜という男の子の母親に心配そうな目で顔を向けた。
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