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夕飯を作りながら、自分の出ていたワイドショーを見る。 買ったばかりのディオールのグロウが襟元のカラーと合っているのを確認して、冷凍食品をレンジに入れた。 息子はスマホでゲームをしている。 カウンターに置かれたスマホが震えた。 手を拭いてスマホを取ると、旦那からの電話だった。 こんな時間に掛けてくることは滅多にない。 「もしもしー、どしたの?」 「おい、雪子、Twitterとか見たか?」 「えーなに?あーあれかな、スーパーとかPTAのとか」 「それだ。おまえ、気づかなかったのか?」 「えっ?」 「お前の動画、かなり拡散されてるぞ!!」 雪子は話も途中で通話を切ると、「ユッキん」で検索した。 「なにこれ…」 Twitterのまとめや掲示板、ニュースサイトが上位に表示された。 リンクの張られた動画を再生すると、車からスーパーまでの間でチラシを折り畳んでポケットにしまってから、店を出るまでの映像が写っていた。 また、PTAの間中、常に雪子の顔だけをアップにしたものもあった。 随所に嫌味な−あからさまに、悪気のある表情を−を見せる自分が写っていた。
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