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雪子は力なくソファに腰を下ろした。 事態を飲み込もうとしているが、脳が受け付けていなかった。 外で車の止まる音がして、慌ただしくスライドドアの音がしたかと思うと、カーテン越しに強いライトで照らされた。 慌てて部屋の電気を消して、カーテンを少し開けてみると、テレビ局の中継車が停まっていた。 一台は雪子が一つの番組にも出ていない局で、もう一つは声すら掛かったことのないネット配信のみの会社だった。 「ままー、どうしたの?」 心配そうに見上げる息子からスマホを取り上げた。 スマホの薄明かりも無くなり、外からのライトだけになる。 「まま、怖い…」 「しーっ!部屋にいってな」と立たせ、階段を指し示す。 「暗いよー、怖いよー」 「いいから!!」 鼻をグズグズ言わせながら息子が階段を登るのを見てから、キッチンのカウンターに隠れてスマホのワンセグを入れた。 「くっそっ!クソが。ネット民やマスコミはホント、クソだな」 思わずキッチンの包丁を手に取りそうになる。 ドアホンが押される。 「ユッキんさーん!いますよね?」 「ユッキんさん。ネット見ましたか?」 「ユッキんさん、ファンに一言お願いしますよ!」 ファンのためにと言えば何か言うと思っている浅はかなメディアに殺意にも似た怒りを雪子は覚えていた。
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