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 改札を出てきたとたん、私を見つけてこれ見よがしのしかめっ面。  でももうそんなのは慣れた。  ……慣れたのか?  嫌そうな顔をされると嬉しくはないから、そこはちょっとよく分からないけど。  でも、もしほかの人にこういう表情で見られたら、私はすぐ飛び上がって、しっぽをまいてすごすごと帰る。  そして、「迷惑がられてるんだ」って一週間ぐらいへこむ。  間違いなく。  自分の思い込みでどこまでもネガティブになれるのが私なんだって気づいたのはごく最近。  でも、この人に対していちいちそういうことしていたら、挨拶さえさせてもらえない。  だからいつも勇気をフル稼働させておくしかない。 「羽方さん‼」 「……なんなの、わざわざそれ持ってきたわけ?」  私が背中にしょってるソフトのギターケースをちらりと見て言う。 「はい。今日はこの辺りに来られるかなって」 「絶対、教えなーい」 「……いいです。じゃあ弾くの聞いてていいですか」 「ヤダ」  つーんとそっぽを向かれてさすがにちょっとしょげる。  だめか、相変わらずのケチだ。  しょんぼりと俯いていたら、 「……じゃあ、歌う?」 とぽそっとした声が降ってきた。 「それは……無理ですよ!」 「ケチ」  さっき自分が思っていたことを、そのまま返されてうなだれる。「歌えとは言ったけどさあ、ギター弾けとは言ってない」とかブツブツ言われても。  だって。歌下手なんだもん。  私なんかじゃおよびじゃない。  つり合いが取れない。  この人のギターを聞くたびにそう思うのに。
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