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「いただきます」
一口頬張ると、
「んんー!!」
思わず声が出た。なにこれ、美味しすぎる。
ほどよくトロトロの卵にプリプリだけど柔らかい鶏肉。玉ねぎがシャクッと歯に触る。そして出汁!
「すっごい美味しい」
「でしょう? 何もかも吹っ飛ぶ美味しさですよね」
田山さんの言葉にハッとする。
だから誘ってくれたのかな。私が悩んでいるみたいに見えたから。気を遣ってくれたのかな。もしそうだとしたらすごい。田山さん優しいな。
じっと田山さんの顔を見ていることに気付いたのか。
「なんですか。あっ、ほら鮮度が落ちてますよ! 食べてください」
「……はい」
ちょっと泣きそうになりながら箸を口にはこぶ。
「やっぱりおいしい~~」
「食べてくださいよー。下谷さん、なんかやつれちゃってるんですもん。
……食べ終わってからガッツリ話聞きましょうか」
田山さんがにまあっと笑いながら言った。
ん?
なんか不穏な空気を感じた気がする。
もう一度まじまじと田山さんを見るも、かつかつと美味しそうに親子丼を書き込んでいるだけだ。何ならご機嫌な感じ。
気のせいかな、と私もかつかつとつい親子丼をかきこむ。ゆっくり食べたいけど、美味しくてつい。
「で、」
先にあらかた食べ終わって、串を片手にした田山さんがこちらを向く。
「へ」
「何があったんですか」
「や、特に……、うーん。なにもないと、思う」
「あるじゃないですか、絶対!」
私はまだ口の中にご飯がある状態でビシビシ串をこちらにむけながら責められてる。
うん。ちょっと怖いのもあいまって、どうしたらいいか分からない。
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