1話「“好き”に、性別は必要ですか?」①

2/3
97人が本棚に入れています
本棚に追加
/566ページ
 ――“普通”じゃないと、生き辛い。  …それが、   この世界の    “当たり前”だと、思う。  ……だから、    僕 には、   ずっと、抱えてきて、   ずっと、    誰にも、    隠しているものが、ある。 ―― 【二条司視点】  4月上旬。  今日は、高校の入学式であり。 僕、二条司は、 入学式の看板が立つ校門を抜け、 すぐに目に入った掲示板に貼ってある クラス分けの紙から、自分の名前を探した。 8クラス分のびっしり並ぶ名前から探すのに 少し時間がかかりつつも、 1年6組の中から見つけて。 下駄箱へ行き、 自分の出席番号の靴箱を使って 上履きに履き替え、自分のクラスへ向かった。 1年の教室は、校舎の最上階の4階にあり、 着慣れた学ランからブレザーに替わって 動き辛いこともあって、 少し、息が上がった。  クラスに入ると、既に半分程の人が 来ているのが見えた。 近くの席の人と話している人も ちらほらいるが、 大半の人は、ケータイをいじったり、 提出物の確認をしたりと、 1人で過ごしていて、 そのため、 教室内は静かで、 抑え気味の話し声が、やけに大きく聞こえた。  黒板に貼られている席順の紙を見ると、 僕の席は、右から4列目の1番後ろだった。 後ろを振り向くと、 4列目に座っているのは、 後ろから2番目・3番目の席の 2人しか、まだいなかった。  席に向かいつつ見てみると、 後ろから3番目の席の人は、 茶色の短髪の、穏やかな雰囲気の男子で。 彼が話しかけている、 後ろから2番目、 つまり、僕の前の席の人は、 顎下くらいの長さのストレートの黒髪に、 細く姿勢の良い身体の、 かなり綺麗な人で。 …中性的な人だと、思った。
/566ページ

最初のコメントを投稿しよう!