写真に込めた淡い思いは 現実に姿を現す

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まず私が用意したのは、セロハンテープ・ハサミ・事前に作っておいたお守袋・そして2枚の『写真』。 一枚には、私が友人と一緒に並んで写っている。もう一枚には、彼がカメラに振り向いている写真。 彼はあまり写真に撮られないし、学校行事でも後ろの方にポツンと立っている事が殆ど。 だから、彼が写っている写真を見つけるのに結構苦労はしたけど、アルバムの中に、ただ一枚だけ入っていた。 でもこの写真を使うのは少しもったいないと思い、私は家を飛び出し、彼の写っている写真を数枚ほど焼き増しした。 そして、元の写真はしっかりアルバムに戻して、焼き増しした一枚を使う事に。 机に一式を揃えて、まるで手術のオペの様に、慎重に作業へ取り掛かる。 でもその作業は至って簡単。私の写っている写真と、彼の写っている写真を、まるでカップルの様に張り合わせるだけ。 こんなことをやる時点で、普通に重症だという事は、自分自身承知している。 でも、この写真を見るだけで、自分の心の蟠りが、少し落ち着く。それに何だか、勇気が湧いてくる。 そして私は、気がつくとその写真を持ち歩くようになっていた。でもそれと同時に、私はこの写真を持ち歩く事に、危機感を抱くようになった。 もしこの写真が、友人や家族に見つかってしまうと、色々と面倒な事になりそうだ。 特に、彼の様な大人しいタイプだと、茶々を入れられるのがすごく嫌だと思う。私もそうだけど。 告白に手の込んだシチュエーションを入れられるのも、彼と私とのきっかけを作ってもらう事も、できればしてほしくない。 それは、彼に対する告白のイメージがまだできていないからかもしれない。 けど、友人や家族頼って彼に告白して、OKをもらったとしても、すぐに別れてしまいそうな気がする。 そう思った私は、机にある引き出しの中から、『裁縫箱』と『端切れ』を取り出す。 元々刺繍は得意だった私は、端切れを切り、縫い合わせて、小さなお守り袋を作った。 その袋の中に写真を入れる事で、写真が誰かに見られる事はない。一人になった時、こっそりお守り袋から中身を出して見る事もできる。 念の為、お守り袋の表面に『守』という漢字を縫い込んで、違和感を無くした。 小学生の時の家庭科の技術が、こんなところで役立つなんて、嬉しい様な、虚しい様な、ちょっと複雑な気分。
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