写真に込めた淡い思いは 現実に姿を現す

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そんな事をしている間に、もう春の入学式が過ぎて、私と彼は高校2年生となる。クラスメイトの皆は、だいぶ浮かれている様子だった。 春なのにもう夏休みの予定を話し込む男子や、彼氏との華やかな青春を謳歌する事に意気込む女子。 私はそんな友人達の話に、相槌を打ちながらそれとなく聞き流していた。彼も同じ様に、賑やかな男子グループから離れ、一人本を読んでいる様子。 友人の一人は私に、「アプリとか使って彼氏作れば?」なんて提案してくる けど、そもそも片思い中の私に、その発言は非常に不愉快と感じてしまう。 私自身が、「私、片思い中なの」とか言っていないから、そんな言葉を投げかけられてもおかしくはない。 私はただ、自分の気持ちとしっかり向き合い、彼ともしっかり向き合いたい、望むのはただそれだけ。 でも、そんな事を考え続けて、もう1年経ってしまった。いい加減なんとかしないと、彼にもそろそろ彼女ができてもおかしくない。 ただ、焦った拍子に告白しても、絶対大こけする。もうおもいきって、友人達に相談しようか、真剣に悩んでいた。 でも、その相談にすら足踏みしてしまう自分が、もう情けなくてしょうがない。 私の様子を見かねた友人が、もう何人も心配の言葉やメッセージが送られて来ている。 友人や自分自身の為にも、早いところケリをつけたかった。でもその気持ちも、毎日あと一歩が踏み出せない。 そんなジレンマを抱えながら、私は放課後になった学校の廊下を歩いていた。 その理由は、彼の『演奏』を聞く為。 彼は昔からギターを両親から習っていたらしく、放課後の誰もいなくなった音楽室を借りて、ひっそりとギターの練習をしている。 1年生の夏休み前、本当にたまたま居残りで、遅くまで学校に残っていた時、彼の弾いているギターの音色に気づいた。 どうやらその時、彼は音楽室のロックをちゃんとしていなかったようで、私が音楽室に駆けつけると、ドアがほんの少しだけ開いていた。 私が学校に残って頑張っていたのも、音楽室の隣にある美術室で、作品の締め切りに間に合わせようとしていた事も、本当に偶然。 前々から彼の事は気になっていたけど、彼の演奏しているギターの音色にすっかり惚れてしまう。 気がつくと私は、毎日学校に遅くまで居残るようになっていた。彼の演奏が聴きたい、ただそれだけの為に。 今日も彼の演奏を聴いて、彼がギターをケースに戻す頃、私は誰にも気づかれないように、こっそり学校から出る。 ・・・つもりだった
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