文化祭

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文化祭

 文化祭の展示の日が来るまで、私と火野くんは、昼休みと放課後を使ってモチーフ編みを繋いだ。そして文化祭の前日の放課後、作業は終わり、展示スペースの床いっぱいの大きさのモチーフ編みができた。小さなモチーフ編みの四角形は、いろいろな色の毛糸を使い、一つ一つは花のような模様をしている。今は床一杯に色とりどりの花が咲いたようになっていた。 「おい写真部! スペース目一杯使ってやったぞ! 文句あるか!」  火野くんが唐突に叫んだ。 「火野くん、もう写真部の人いないよ」  もう日が落ちていて、写真部の人たちは帰ってしまっている。 「いないから言っているんじゃないすか」 「あはは、そうだね。火野くん、おかげですごくいいものができたよ。ありがとう」 「いえいえ。あの、俺の作品もこの上に置いてもいいすか」 「もちろん! 一緒に展示しよう!」  火野くんが作ったバケモノの様な編みぐるみ達が、巨大なモチーフ編みの上に置かれた。なんだかバケモノが花畑で遊んでいるような感じがする。バケモノと花畑、ちょっと不思議な組み合わせだ。だけど巨大なモチーフ編みには火野くんが作った毒々しい色味のモチーフ編みも混ざっているからか、不思議と馴染んでいた。   本来の存在するものより、目が多い、手足が多い、色が違う、大きいというだけで、生き物はバケモノと呼ばれる。編み物も大きくすれば、バケモノに近づくのかもしれない。火野くんの生み出したバケモノ達と私の生み出したコースター達は、意外とと近いものがあるのかもと感じた。  それにしても、去年の手芸部の展示と比べて、ものすごく派手な展示になった。新しい部員一人で、ここまで変わるんだ。  去年、先輩達が引退して、実質部員が私一人になったころには、こんな光景想像もできなかった。  毛糸でコースターを編もう。コースターなら、もし手芸部がある日突然なくなっても、作品が未完に終わらずに済む。手芸部が続いたら、その時はコースターを繋げて少し大きな作品に変えればいい。そんなことを考えていたことを、今になって思い出した。  火野くんが来るまで普通の手芸部だった。だけど今は、他の部活に負けない、素晴らしい手芸部だと、今なら思えた。もっとたくさんの部員を集めて、たくさんの作品を作りたいと思う。
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