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活動
今日も、手芸部は私と火野くんの二人体制だ。二人で活動しているが、部室で二人きりというわけではない。手芸部の部室である空き教室は、半分は他の部活の部室となっていて、そちらはそちらで活動しているため、教室内は案外賑やかだ。そのおかげか、男子である火野くんともわりと話しやすい。手芸部は和やかに活動していた。
「ねえ、火野くんって、どうして足とか目の多いマスコットばかり作ってるの?」
ある日、私は火野くんに聞いてみた。その日も火野くんは、ひつじさんのマスコットに大量の足を付けていた。額には大きな角もある。
「その方がいいと思いませんか」
「え、ええと……」
正直言うと、そう思わない。だから不思議に感じて尋ねているのだけど……
「俺にはこの方がしっくりくるんです」
「そう……」
説明しようのない、感覚的なものなのだろうか。だけど、こういうモンスターみたいなキャラクター好きな人もいるしね。そんなに不思議じゃないのかもしれない。
「俺、自分の目が二つしかないのも、足が二本しかないのもなんだかしっくりこないんです。できれば、義眼や義足でいいから付け足したいっす。世の中には『手足がある状態がしっくりこない』って言って、手足を自分で切り落とす人もいるらしいっすから……多分俺はその逆っすね」
「ええー!?」
前言撤回!火野くんって、やっぱり不思議だ。
「そんなにびっくりしなくても」
「びっくりするよ。目や足なんか増やしても過ごしづらそうだよ」
「うーん、そうっすかね? 部長こそ、どうしてそんなにたくさんのコースター作ってるんすか」
私の前には、編み物で作った四角いコースターが積み上がっていた。
「えっと、これはね……」
「これだけあれば、口や手足の多い生き物にも一気にお茶が出せますね」
いや、そうじゃないの。勝手に火野くんのワールドに持っていかないで。
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