準備

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 手芸部は、私と火野くんの実質二人体制のまま活動が続いた。そして二学期になり、文化祭が近づいてきた。  手芸部は例年のごとく作品の展示である。いつも部室として使っている空き教室の半分が展示スペースとなる。  今年は火野くんがいろいろ作ってくれたし、私と火野くんの作品だけでなかなか見応えのある展示ができそうだ。    文化祭まであと三日。どの部活も文化祭の出し物や展示の準備に取り掛かっている。  準備といっても、手芸部は作品を並べるだけだし、と呑気に構えていた。しかし、部室の扉を開けたとき、しまった、と思った。  私達手芸部は、一つの空き教室を他の部活と共有で使っている。その部活は写真部だ。写真部の人たちはすでに写真の展示の準備を進めていた。写真を貼り付ける白いパネルが教室に立ち並んでいる。その白いパネルたちは、教室の三分の二を占めていた。  私はすぐに去年の文化祭を思い出した。手芸部の人数が少ないため、展示スペースの一部を部員の多い写真部に譲ったのだ。  しかし、今年は火野くんの作品も多いことだし、割り当て通り教室半分使うつもりでいた。だけどその考えは写真部には話していなかった。まさか写真部が私達手芸部に何も言わずに去年と同じスペースを取ってくるとは思っていなかったからだ。  どうしよう。話をちゃんとしておくんだった。  私が立ち尽くしていると、火野くんがやって来た。
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