準備

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 火野くんも、教室の様子を見て怪訝な顔をした。 「部長、教室半分使えるんじゃないんすか」 「うん、割り当てはそうなんだけどね……実は去年……」  去年のことを火野くんに話した。しかし、火野くんの顔は険しいままだ。 「去年は去年、今年は今年っすよ。去年一度譲ったからって、この先も何も言わずに譲り続けるなんておかしいっす」 「だ、だよね。写真部の部長さんに話してくるよ」 「俺も行きます」 「ごめんなさい! 二年生の子が、去年の記憶を頼りにパネルを立てちゃったみたいで。すぐに直します」  写真部の部長さんは、あっさり非を認めてくれた。写真部員たちは、部長の指示を受けて設置したパネルを移動させていく。教室の前半分のスペースが空いた。  なんだ、きちんと言えば大丈夫だったんだ。私はほっと一息ついた。 「火野くん、ありがとう」 「俺何も言ってないっすよ」 「火野くんがああ言ってくれなかったら、私は何も言わずにそのままスペースを譲っちゃってたよ。火野くんがいてくれてよかった」 「それは、どうも」  火野くんは照れくさかったのか、うつむいて頭を掻いた。  問題も無事解決したので、私も火野くんも機嫌よく作品を設置していた。 「なんだ。あのぐらいの作品の量なら、三分の一スペースで十分じゃん」  とつぶやく声が、背後から聞こえた。写真部の人だとすぐにわかった。
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