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その青年はは、誰にでも平等に極めて優しく接した。
生活に余裕はなかったが、腹の空いた子供がいれば食料を分け与え、乾きに倒れた浪人がいれば水を与え、愛を知らぬ赤子がいれば家に招き愛を与えた。
そんな彼に、ある日神の祝福がもたらされた。
彼の優しさに満ちた日々の行動に感動した神が、彼に一つの異能を与えたのだ。
それは、あらゆる痛みを癒す力。あらゆる苦しみを消す力、あらゆる悲しみを忘れさせる力であった。
彼は、その力を自らの欲の為に使うことはなく、ひたすらに人々の為に使った。
病を治し、怪我を癒し、病める精神を落ち着けた。
しかし、人の身を凌駕する能力は、得てして代償が必要である。
彼の癒した痛みは、消した苦しみは、忘れさせた悲しみは、皮肉なことに、彼の元に全て帰ってきたのである。
肌は爛れ、体は痩せこけ、顔は土気色に染まり、彼の面影はすっかり消えてしまった。
彼は怒った、今まで彼が助けてきた人々は、彼のことをまるで助けようとはしない。どころか、彼に関わることが禁忌であるとでも定義したか、彼を隔離し、差別し、蔑んだ。
優しさは、全て無駄だった。
その日、その村は一人の青年によって滅ぼされた。
右手の指は二本足りず、左足は大きく腫れており、重心はかなりの前のめりで、二本の長槍を振り回すその姿は、まるで阿修羅のようであった。
いや、そんないいものではなかったかもしれない。
怒りに燃えた、悲しみに潰えた、悔しさに震えたその姿はまるで人外ーー
ーーバケモノのようであった。
神は誠に気まぐれである。
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