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両手いっぱいにバッグを持った状態でどうにか鍵を取り出すと、私はそれをドアノブに差し込んだ。
5日ぶりの我が家、であった。
わずか数日だというのに、鼻腔をくすぐる我が家の匂いに懐かしさを覚えながら私はドアを開ける。
家の中は真っ暗だった。
──直人?
リビングの電気をつけ、着替えの入ったスポーツバッグと通勤用のバッグをいつものようにソファーに置くと、不安を覚えた私は寝室を覗き込む。
すると、直人は既にベッドに入り、すやすやと寝息を立てていた。
「直人」
寝ている直人に、私は声をかける。
「……んっ」
直人は瞼をこすりながら、ゆっくりと目を覚ました。
「もう、寝てたの?」
「だって、起きててもやる事がないし」
「いつも、スマホでドラクエやってたじゃん?」
「うーん、何かそんな気分になれなくてよ……」
直人は笑う。
私の失踪を怒るよりまず、帰宅してきた事に安堵したらしく、直人のその笑顔には屈託が一切見られなかった。
「晩ご飯は? 食べたの?」
「食べたよ」
私の問い掛けに直人は笑いながら立ち上がり寝室を出ると、リビングのゴミ箱を指さす。
ゴミ箱の中には、吉野家の空き容器やコンビニのおにぎりの包装フィルムなどが、大量に入ってあった。
「……ひどい食生活してたのね」
ゴミ箱から直人に視線を移すと、私は肩をすくめる。
「俺、料理できないからよ……」
「だから、言ったじゃん。
これからは男も、何かしら料理を覚えた方がいいって」
「まったく、その通りだと思ったよ」
直人は力無い様子で、頭をかく。
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