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けど、直人はカラオケには行っていなかった。 そして、その事に井上サンが気付いた頃には、既に直人は元カノの佳奈って子と二人で忽然と姿を消していたのだそうだ。 「これ、俺の嫁さん」 こう、にこやかに語る直人から画像を見せてもらった事で、直人が「私の旦那」だと知った井上サンは、共に姿を消している佳奈って子に慌てて電話をした。 しかし、井上サンからの電話を佳奈が取る事はなく、その晩二人がどうしていたか。 それについて井上サンは、遂に知り得る事が出来なかった。 後日、佳奈って子が井上サンに返信してきたLINEには 『ゴメン、昨日気分が悪くなったから、何人か帰る子達にまぎれて帰った』 としか書かれておらず、直人の「な」の字も書かれていないその内容は、逆に井上サンをますます疑心暗鬼にさせたとの事であった。 「だって、『他の子と帰った』なんて書いてますけど、あの晩二次会に来なかったのは、佳奈と西原サンの旦那さんの柴田クンの二人だけなんですよ。 コレって、どう考えても怪しいと思いません?」 私にLINEを見せ、淡々と疑問を述べていく井上サン。 その井上サンの話を聞いて、確かに私も怪しいと思った。 佳奈って子が井上サンに送ってきた、矛盾を含んだLINE。 そして、同窓会が行われた翌日以降の直人の態度など、冷静に考えれば怪しいと思える点は確かにあったからだ。 「初歩的な事を訊くけど、その日、西原っちの旦那さんは指輪をしてたの? そんで、井上サン以外に結婚してるとかどうかって事を言ってたの?」 福ちゃんが、私の気持ちを代弁するかのように井上サンに尋ねる。
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