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「そう、みたいだよ」
福ちゃんの言葉を私は拾い上げると、続けて言った。
「アタシ、結構前から直人と絡みあったから、その当時の事を知ってるけど、直人のヤツ
『ふられちゃった……』
って言ってるわりには、あまり落ち込んでる様子を見せてなかったもん」
「あっ、そういえば西原っちの旦那って、ウチらが昔行った合コンに来てたんだよね。
男の方が人数集まらないって言って、何人か数合わせみたいに呼ばれた高校生に混じってさ」
「うん、そう」
私は頷く。
「こっちとしては、高校生なんか恋愛対象になんないからさ。
当時は、適当に相手してたんだよね。
唯一、直人とは話が合ったからLINE交換して、その後もちょくちょくウチらの飲み会に呼んだけど」
「その高校生が、今やアンタの旦那だもんね。
いや人生、どう転ぶかホント分からないモンだね」
「……まぁね」
相槌の言葉を返すと、私は徐々に言葉を発さなくなっていった。
その様子は、福ちゃんに言わせると、「苛立っている」と、他人に思わせるには十分なモノだったらしい。
そして、さすがに私の様子を察したのか、井上サンは
「ごめんなさい。
アタシ、気にさわるような事言っちゃって……」
と言うと、申し訳なさそうな顔つきで私に頭を下げた。
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