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「ねぇ、結局土曜日は、同窓会を抜け出して二人でドコに行ってたの?」
私は口を開く事で、リビング内に漂っている静寂をバリケードを取っ払うみたく打ち破った。
「……何もしていない」
「ドコに、行ってたの?」
語気に力を込め、私はもう一度同じ質問を直人にした。
「……スターバックス」
「その後は?」
「帰った」
「本当の事を言ってよね」
再び語気に力を込めて言うと、私は目を泳がせている直人の横顔を真っ直ぐに見つめた。
「……帰った」
「それ、アタシが信じると思って言ってんの?
実際、アンタ。
その日帰ってきたの、0時回ってたし」
直人はうつむいたまま、言葉を返そうとはしなかった。
「何か、やましい事があるから、そんな黙ってんじゃないの?」
私の言葉は、どんどんと刺々しいモノに変貌していく。
「そんな訳じゃない」
「じゃ、どういう訳なの?」
──沈黙。
「今日、遅かったのも、実は残業じゃなく、その佳奈って子に会ってたからじゃないの?」
──沈黙。
私は手近にあった通販のカタログを掴むと、それを力いっぱい壁に向かって投げつけた。
ドンッ、という、夜中にはそぐわないその衝撃音は、直人の身体をピクリと反応させた。
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