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「……お前、俺が信じられないのかよ?」
数十秒の沈黙の後、ようやく直人が口を開いた。
しかし、その言葉は私の中で何の答えにもなり得ていなかった。
「アンタ、アタシにお前って言える立場なの?」
自分でも驚く程、冷ややかな声で私は返した。
そんな私の声とは対照的に、直人の顔は怒りでどんどんと紅潮していった。
「そりゃ、アンタはいいよね」
ソファーの背もたれに身体を預け、皮肉を込めた目で直人を見据えながら私は続ける。
「アンタ、アタシと違ってまだ若いモンね。
いいよねー、23歳。
アタシも23歳の時は、それなりに遊んでたし。
けどね、アンタ結婚してんのよ?
その事、もう少し自覚して行動してよ。
恥ずかしくないの?
節操もなく、鼻の下伸ばして元カノと楽しげに喋ったりしてさ」
「お前、俺と佳奈のやり取りをちゃんと見てきた上で言ってんのかよ!」
今度は、直人が声を上げた。
けど、私はそれを冷静に受け流し
「夜中なんだから、大きい声出さないでよ」
と、自分の事を棚に上げて直人に言った。
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