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休みの間、私は福ちゃんのマンションで井上サンからのLINEの返信を待っていたが、結局井上サンからLINEが返ってくる事はなかった。
というより、私が井上サンに送ったLINEは「既読」にすらならず、生殺しのようなスルーの状態に、私はただため息をつくのみであった。
「やっぱり、訊きずらいのかな?
いくら、浮気がどうとはいえ、井上サンからすれば、友達を売るような行為だもんね……」
心配になった私は、ベッドとして用意されたソファーで寝る前に思わず福ちゃんに訊く。
「けど、井上サンが言い出した事だからね。
ここまで来て、友達を売りたくないとか言うんだったら、最初から西原っちに言うなって話でしょ。
だから、どうにかしてでも井上サンには動いてもらわなきゃ」
パジャマ代わりのロンTを身にまとった福ちゃんは肩をすくめると、続けて述べた。
「まぁ、今日LINEが来なくても、明日には会社で会えるから、その時に井上サンに訊いてみようよ。
『井上サン、佳奈って子なんて言ってた』ってさ。
多少強引でも、こういう風に動いていかなきゃ、アンタいつまで経ってもこの部屋に居候するハメになるよ」
その言葉に私は頷くと、明日井上サンにどのように切り出すか、ある程度シミュレーションをしながら眠りについた。
そして、月曜日を迎えた。
私は井上サンを詰問する気でいっぱいだったが、一体何があったのか。
朝礼が始まり、終わった後も井上サンのタイムカードは裏返ったままだった。
「井上サン、って今日休みなの?」
不思議に思った私は、井上サンと同じ部署であり、同期入社の女の子に事の次第を訊きにいった。
「……なんか、急に体調を崩したみたいで、休むみたいですよ。
アタシも突然の事なんで、よく分からなくて」
井上サンの同期も寝耳に水らしく、戸惑いを浮かばせながら答える。
なんとも思わせ振りな井上サンの欠勤に、私は首をかしげるしかなかった。
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