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「もしもし」
私は電話を取るが、どういう訳か電話の主である井上サンから返答はなかった。
「もしもし?」
私はもう一度同じ言葉を繰り返し、井上サンを促す。
けど、聞こえてくるのは、チリチリと炭が燃えるようなノイズ音のみであり、井上サンは沈黙しきったままであった。
「……井上サン、だよね?」
謎とも言える井上サンの沈黙に不安になった私は、つい間の抜けた質問をしてしまう。
しかし、井上サンからは相変わらず返答はない。
「みんな、心配してるよ?
井上サン、今週入ってずっと休んでるからさ。
なんか、会社に来れない事情があんの?」
「……ごめんなさい」
ようやく、井上サンから返答があった。
しかし、震え声で発せられたその謝罪が何に対しての謝罪なのか分からない為、私は思わず「えっ?」と聞き直した。
「ごめんなさい」
今度は、幾分ハッキリとした声で井上サンは言った。
一体、どうしたというのか。
何故、井上サンは急に私に対して謝っているのだろう。
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