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「あのさ、なんでそんな謝ってる訳?」
井上サンの謎の謝罪が不思議で仕方なかった私は、理由を尋ねずにはいられなかった。
しかし、何か言いにくい事情があるのか、井上サンはすぐに答えようとはしない。
「ひょっとして、会社を休んだ事に対して謝っている訳?」
返答を促す為、私は自分なりに出した答えを井上サンに対して提示してみる。
「それだったら、気にしなくていいよ。
確かに井上サン、2日3日って休んでるけど、ウチらも体調崩して数日休む事はあるし、皆、そこまで怒ってはないからさ。
ちゃんとした事情を話せば、きっと分かってくれると思う……」
「……いえ、そうじゃないんです」
私の言葉を遮るように、井上サンは言った。
「えっ?」
「……そうじゃないんです」
井上サンは言い終えると、どういう訳か電話の向こうで泣き始めた。
「ちょ、井上サン! 大丈夫!」
突然の事態に私は狼狽するのみであったが、井上サンは再び「ごめんなさい」と言うと、嗚咽混じりの震えた声でこう続けた。
「西原サン、ごめんなさい……。
全部、アタシが悪いんです。
アタシが余計な事を考えなければ、こんな事にならなかったのに……。
本当にごめんなさい」
その後、井上サンは会社が終わった後に会えないか、と私に訊いてきた。
「……大丈夫だけど」
私が答えると、井上サンはこう私に言って、電話を切った。
「……西原サン。アタシ、そこで全部話します。
この間の同窓会で何があったのかを、本当の事を全部」
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