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6時に仕事を終えて会社を出ると、私は福ちゃんを引き連れ、井上サンが指定してきたカフェに入り、そこで彼女を待った。
「なんか、ただ事じゃない、って感じよね。
3日休んで、突然『本当の事を話します』って言ってきてるんだからさ」
福ちゃんは言うと、ミルクがふんだんに使われただけで「ロイヤル」という冠がつけられたミルクティーを一口飲む。
私達二人がカフェに入って20分程経った頃に、井上サンは店内に入ってきた。
待ち合わせ時間の7時から、5分遅刻。
常におっとりしているものの、頑なに自分のペースを崩さない井上サンらしいな、と私は思った。
店内に入ってきた井上サンのその目は、ウサギのように真っ赤であった。
おそらく、電話を切った後もしばらくの間、泣き続けていたのだろう。
そして、井上サンは一人の女の子を引き連れてきていた。
多分だけど、この子が今回の騒動を引き起こした佳奈って子だな、と私は思った。
キャラメル色をした茶髪に、マスカラだらけの厚化粧。
一体どこで働いているのか、ギャルっぽい風貌をした佳奈と思われる子は、これから自身に降り掛かる非難に身構えているのか、うつむいた状態でテーブル席に座っている私達の向かいに腰掛けた。
「アナタが佳奈って子?」
極力感情を押し殺しながら、私は尋ねる。
佳奈は、弱々しく首を一回縦に振り、「はい」と小さく答えた。
「アンタ、大変な事してくれちゃったねー」
絡みつくような視線で佳奈を見つめながら、福ちゃんが言う。
すると、井上サンは「やめて下さい」と、佳奈を守るように言うと、すぐさまこう続けた。
「悪いのは佳奈じゃなくて、アタシなんです。
アタシが、余計な気持ちさえ持たなければこんな事に……」
「いや、ジュンちゃんが謝る必要ないよ。
今回の事、思いついたの全部アタシなんだからさ」
「ちょっと、アンタら」
佳奈と井上サンの二人を見据えながら、福ちゃんが言った。
「なに、二人してかばい合ってんの?
こっちとしては、話が全く見えないんだけど」
井上サンは、おそるおそる視線を上げる。
そして、真向かいにいる私を見据えると、ゆっくりと語り始めた。
井上サンから語られた今回の騒動の真相は、私が直人に対して抱いている「怒り」をどんどんと鎮火させていった。
それと同時に、何故こんな事になってしまったのかと、直人の真意を見抜けなかった自分の不明に対して、私は嘆く程であった。
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