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──この際だから、私をここまでさせてしまった「苛立ち」の原因も、今ぶちまけてやろうか。 私は思ったが、それが危険な行為だというのは、頭に血が上った今のこの状態でも十分理解出来た。 もし、私が「それ」を口にしたとしよう。 そうすれば直人は、確実に真っ向から全否定する。 そして、今、私達を取り巻いているこの険悪な空気も、さらに悪化するだろう。 だから、私は「苛立ち」の原因は口に出さず、 「家事を手伝わない」 「掃除をする気もないのに、なんでポロポロ食べ物をこぼすの」 など、核心の外堀を埋めるように、取り留めのない事で直人に当たり、気持ちの収束をはかっていった。 けど、抱え込んでいた「苛立ち」が私の中のブレーキをとっぱらってしまったのか。 いつも以上の私の口撃に直人は早々と黙り込むと、ビスケットのカケラが落ちたカーペットを数分の間、ただ蒼白い顔で見つめていた。 ポタリと、蛇口からシンクにこぼれ落ちる水滴の音が、再び私の耳に聞こえてくる。 その音が、耳障りに思えて仕方なく思えてきた私は立ち上がりキッチンに行くと、蛇口の栓を叩きつけるようにしめた。 その私の行動とシンクロするように直人は立ち上がると、無言のまま、足音を殆ど立てずにリビングから出ていった。
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