4/8

246人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
そして、同窓会が終わって日曜になったら、佳奈から電話が掛かってきたんです。 『ねぇ、昨日どうだった?』って。 アタシは、『ダメだった、やっぱ柴田クン結婚してるし』って、ため息交じりに返答しました。 そしたら、佳奈。 『じゃあ、こんなのはどう?』って、アタシに話を持ちかけてきたんですよ」 「話?」 「はい」 井上サンは、小さく頷く。 「佳奈は、アタシにこんな事を提案してきました。 『ねぇ、アタシが「直人の元カノ」って事を生かして、直人が同窓会でアタシに惚れ直した、って事にしない? アレなんでしょ? 直人の奥さん、直人より6つも年上で、結婚生活も夫婦っていうより、「姉と弟みたいな感じ」なんでしょ? そんなの夫婦じゃないし、結婚した意味が無いと思わない? それだったらさ、なんか疑い持たせて別れさせた方がいいでしょ。 直人や奥さん、そしてジュンちゃんの為にもさ』って」 私は驚いて、井上サンの隣で縮こまっている佳奈を見た。 佳奈は非難を怖れているのか、うつむいたまま私と目を合わせようとはしない。 「さすがに、アタシ。 佳奈の、その提案を断りました。 そんな事をしたら、西原サンが柴田クンと別れちゃうじゃない、って。 でも……」 ここで井上サンのその声は、ろうそくの火が消えるように徐々に小さくなっていく。 「でも?」 焦れた私は、井上サンを促す。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

246人が本棚に入れています
本棚に追加