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そして、同窓会が終わって日曜になったら、佳奈から電話が掛かってきたんです。
『ねぇ、昨日どうだった?』って。
アタシは、『ダメだった、やっぱ柴田クン結婚してるし』って、ため息交じりに返答しました。
そしたら、佳奈。
『じゃあ、こんなのはどう?』って、アタシに話を持ちかけてきたんですよ」
「話?」
「はい」
井上サンは、小さく頷く。
「佳奈は、アタシにこんな事を提案してきました。
『ねぇ、アタシが「直人の元カノ」って事を生かして、直人が同窓会でアタシに惚れ直した、って事にしない?
アレなんでしょ?
直人の奥さん、直人より6つも年上で、結婚生活も夫婦っていうより、「姉と弟みたいな感じ」なんでしょ?
そんなの夫婦じゃないし、結婚した意味が無いと思わない?
それだったらさ、なんか疑い持たせて別れさせた方がいいでしょ。
直人や奥さん、そしてジュンちゃんの為にもさ』って」
私は驚いて、井上サンの隣で縮こまっている佳奈を見た。
佳奈は非難を怖れているのか、うつむいたまま私と目を合わせようとはしない。
「さすがに、アタシ。
佳奈の、その提案を断りました。
そんな事をしたら、西原サンが柴田クンと別れちゃうじゃない、って。
でも……」
ここで井上サンのその声は、ろうそくの火が消えるように徐々に小さくなっていく。
「でも?」
焦れた私は、井上サンを促す。
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