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お互いを慰めあう井上サンと佳奈を置き去りにする形でカフェを出ると、私と福ちゃんはしばらく会話を交わさず、無言のまま最寄りの駅へと歩いていた。 「……結局、直人。浮気も何もしてなかったんだね」 歩いて5分程してから、私はようやく言葉を吐く事ができた。 「井上サンの言ってる事が、本当だったらね」 安堵した私に冷や水を浴びせるように、福ちゃんは保険めいた言葉を返す。 「で、西原っち。この後どうするの?」 「えっ?」 「家に帰って、旦那と仲直りすんの?」 私は「分からない」と、福ちゃんに対して返した。 「直人はともかく、アタシは直人の事がホントに好きで結婚したのか、今まで分からなかった状態でさ……。 『姉と弟』みたいな関係、って直人が井上サンに言ってたみたいだけど、その通りなんだよね。 アタシ、直人の事を『旦那』っていうより、『弟』みたいな感じで見ていたフシが、付き合ってた時からあったからさ……」 「じゃあ、このまま別れんの?」 私を横目で見ながら、福ちゃんが改札に繋がるエレベーターの呼び出しボタンを押す。 「……わかんない」 私は、肺の中の空気を全て吐き出すかのような深いため息を吐いた。 「あの、恋愛大好きって感じの中学生みたいなモノの言い方をするけど……」 エレベーターに乗り込むと、福ちゃんは冷ややかな口調で話し始めた。 「アンタ、旦那クンが浮気しているかも、って思った時、かなりイライラしていたよね? それって、旦那クンの事が好きだっていう、何よりの証拠なんじゃないの? だったらさ、変に意地張らずに旦那クンと仲直りしたら? 大体ウチも、一週間とか二週間って感じでアンタを泊める余裕とか無いんだよ」 突き放すような福ちゃんの言動に驚いた私は、思わず福ちゃんの顔を見据える。 福ちゃんはバッグから定期を取り出して改札を通ると、失笑気味に続けて言った。 「しかし井上サン、バカだよねぇ。 火遊びするなら、バレないように火遊びすればいいのに。 純粋も結構だけど、あそこまでいったら、ただのバカだよ。 まぁ、被害者はアンタだから、こんな事ホントは言っちゃいけないんだけど」
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