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「あのさ、直人」 私が切り出すと、直人は顔を上げ、視線をゆっくりと私に向けた。 「ゴメン。 アンタの話を全部聞かずに、くだらない行動に出ちゃって……」 「もういいよ」 遮るように直人は言うと、こう言葉を続けた。 「お前が帰ってきた。 俺、もうそれだけで十分だから」 言い終えた直人は、リビングテーブルに置き去りにしたままでいるコンビニ弁当の空き容器をゴミ箱に捨てる。 「あのさ」 その直人の背中に、私は声をかける。 直人はゴミ箱のフタを閉じると、不思議そうな面持ちで私の方を見た。 「あの、どうして……。 アタシが出ていく時、引き留めなかったの?」 「えっ? だって俺。悪くないモン」 口先を心持ち尖らせながら、子供のような口調で答える直人。 私は怒るのを通り越して、思わず笑ってしまった。 っていうか、もっと他に言いようがあるだろうに……。 「……それによ」 私が笑っていると、直人はさらに言葉を続けた。 「俺、信じてたからよ。 雪絵は絶対帰ってくる、って」 一語一句言い淀む事無く、どこか確信に満ちた口調で直人は言った。 「……もし、アタシが帰って来なかったとしたら?」 私は尋ねずには、いられなかった。 結果としてその行為は無かったのだが、不貞を疑われたというのに、どうしてそんな自信満々でいられるのか。 「……そうだなぁ」 直人は腕組みをすると思案しているのか、にわかに首をかしげる。
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