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「……はい。 そうですね、仕入とも話したんですが、その商品はそちらの単価ではちょっと……。 そうですね……。 申し訳ございません、失礼いたします」 電話を切ると、私はゆっくりと身体の筋を伸ばした。 同時に聞こえてくる、休憩時間を告げるベルの音。 昨日、変な体勢でソファーで寝たせいか、身体のあちこちが痛い。 痛む身体をかばいながら私はデスクから立ち上がると、同時に井上サンを含むいつものメンバーも立ち上がった。 井上サンらと共に、コンビニでお昼ご飯を買ってロッカーへ入ると、私達は「キモい」としか形容できない上役の悪口や、面倒くさい客の話など、思い思いの事を話し合った。 「……あの、西原サン」 井上サンが、今やすっかりと旧姓になってしまった私の名字を口にする。 「んっ?」 「ゴメンナサイ。 アタシ、昨日くだらない事を言って……」 「あぁ、気にしないで」 取り繕うように私は笑って返すと、私は続けて述べた。 「ってかさ、ビックリだよね。 井上サンとウチの旦那が、まさか高校の同級生なんてね。 そういう話を聞くと、ホント世間は狭いって思うよ」 「……ホントですね」 はにかむように井上サンは笑うと、チルドカップのミルクティーを一口飲む。
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