246人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「旦那サン、何て言ってました……?」
おそるおそる、といった感じで井上サンが私に尋ねてきた。
「あっ、訊いてないの、アタシ」
サラダを食べながら手短に私は返すと、左手をぶんぶんと振った。
「昨日、くだらない事で喧嘩しちゃってさ。
とてもじゃないけど、切り出せる気分じゃなくなったよ」
「……そうですか」
井上サンは、悲観とも安堵ともとれない顔つきをした。
「でもさ、西原っち。
井上サンの言ってる事がホントだったら、大問題だよ。
それって、立派な浮気になるんだからさ」
私と同期入社の福ちゃんが、焼きそばパンをほおばりながら言う。
「……まぁ、詳しい状況を直接旦那から訊いてないから、なんとも言えないけどね」
「だーかーらぁ」
ゴクリ、という音を立てて焼きそばパンを飲み込むと、福ちゃんは威圧するように私に詰め寄ってきた。
「怖がる気持ちはわかるけど、一度訊いてみなよ。
真剣じゃなく、それとなく軽い感じでさ。
もし、旦那クンが何かしてたとしたらアンタ、笑い事じゃすまされないよ」
「わかった、わかったよ」
おせっかい、とも言える福ちゃんの言葉に私は場当たり的な言葉を返すと、ペットボトルの緑茶を半分程一気飲みした。
最初のコメントを投稿しよう!