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「旦那サン、何て言ってました……?」 おそるおそる、といった感じで井上サンが私に尋ねてきた。 「あっ、訊いてないの、アタシ」 サラダを食べながら手短に私は返すと、左手をぶんぶんと振った。 「昨日、くだらない事で喧嘩しちゃってさ。 とてもじゃないけど、切り出せる気分じゃなくなったよ」 「……そうですか」 井上サンは、悲観とも安堵ともとれない顔つきをした。 「でもさ、西原っち。 井上サンの言ってる事がホントだったら、大問題だよ。 それって、立派な浮気になるんだからさ」 私と同期入社の福ちゃんが、焼きそばパンをほおばりながら言う。 「……まぁ、詳しい状況を直接旦那から訊いてないから、なんとも言えないけどね」 「だーかーらぁ」 ゴクリ、という音を立てて焼きそばパンを飲み込むと、福ちゃんは威圧するように私に詰め寄ってきた。 「怖がる気持ちはわかるけど、一度訊いてみなよ。 真剣じゃなく、それとなく軽い感じでさ。 もし、旦那クンが何かしてたとしたらアンタ、笑い事じゃすまされないよ」 「わかった、わかったよ」 おせっかい、とも言える福ちゃんの言葉に私は場当たり的な言葉を返すと、ペットボトルの緑茶を半分程一気飲みした。
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