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──夕方六時。
昼休みでのやり取りがあったせいか、私は殆ど仕事に集中する事が出来なかった。
「あっ、西原サン。お疲れさまです」
先に仕事を片付けた井上サンが、傍らを通る際、笑顔で私に挨拶をしてくる。
「うん、お疲れ」
「……あの、西原サン」
「んっ?」
「アレでしたら、アタシ。
また、佳奈にLINEを送って詳しい話を訊いてみましょうか?
土曜の同窓会、二人共途中でいなくなってたけど、ドコに行ってたの、って」
「いいよ、そんな事しなくて」
持っていたボールペンを傍らに置くと、私は愛想笑いを浮かばせながら手を振る。
「訊くんだったらアタシ、直接旦那に訊くからさ。
井上サンは、何もしなくていいよ」
「……わかりました。お疲れさまです」
表情一つ変えずに井上サンは言うと、静かに部屋を出ていった。
「いいの、西原っち?」
井上サンが出ていくと、今度は隣の席の福ちゃんが低い声で私に尋ねてきた。
「いいよ。
さっきも井上サンに言ったけど、今日旦那に直接訊いてみるから」
「旦那クンが素直に白状するとは、アタシ的にはとても思えないけどね」
福ちゃんは言うと、どこか呆れるように肩をすくめる。
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