3/3

246人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
──夕方六時。 昼休みでのやり取りがあったせいか、私は殆ど仕事に集中する事が出来なかった。 「あっ、西原サン。お疲れさまです」 先に仕事を片付けた井上サンが、傍らを通る際、笑顔で私に挨拶をしてくる。 「うん、お疲れ」 「……あの、西原サン」 「んっ?」 「アレでしたら、アタシ。 また、佳奈にLINEを送って詳しい話を訊いてみましょうか? 土曜の同窓会、二人共途中でいなくなってたけど、ドコに行ってたの、って」 「いいよ、そんな事しなくて」 持っていたボールペンを傍らに置くと、私は愛想笑いを浮かばせながら手を振る。 「訊くんだったらアタシ、直接旦那に訊くからさ。 井上サンは、何もしなくていいよ」 「……わかりました。お疲れさまです」 表情一つ変えずに井上サンは言うと、静かに部屋を出ていった。 「いいの、西原っち?」 井上サンが出ていくと、今度は隣の席の福ちゃんが低い声で私に尋ねてきた。 「いいよ。 さっきも井上サンに言ったけど、今日旦那に直接訊いてみるから」 「旦那クンが素直に白状するとは、アタシ的にはとても思えないけどね」 福ちゃんは言うと、どこか呆れるように肩をすくめる。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

246人が本棚に入れています
本棚に追加