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哀れ、豆粒大の醜い子は着の身着のままで外を彷徨う破目になり、心の中が吹雪のように寒々となりながらとぼとぼと叢の中を歩いていると、クチクラが金ぴかな艶を持ったコガネムシにばったり出会いました。
「いやあ、こんにちわ、僕は見ての通りコガネムシで名をキンキンて言うんだけど君は見かけない子だなあ。一体どんな種類で名は何て言うの?」
「僕はギョウチュウで名無し」
「ぎょ、ギョウチュウ?!而も名無し!」とコガネムシは大変驚きました。「ということは親がいない?或いはその恰好からして親に捨てられた?」
「そう、僕、親に肛門から生まれたギョウチュウだからって捨てられたんだ」
「そ、そうか、そんな酷い言いようをして捨てるなんて相当、惨い親だ!君はとっても可愛そうな子なんだなあ。よし、せめてもの救いになるように僕が名前を付けてやろう。えーと、そうだなあ、君は半寸の僕の倍くらいの大きさだし、一応、人間みたいな体つきをしてるし、宿無しだから一寸家なき子と名乗ったらどうだい?」
「ああ、それはまあ、いいかもなあ・・・」
余り嬉しそうじゃない気色を見てコガネムシはもうちょっといい名前を付けてやろうと思い、そうだと閃いて被っていた帽子を差し出しました。
「これ、あげるよ」
「えっ!」
「これを被れば、丁度うまい具合に一寸帽子ってことになるだろ!」
「はあ、なるほど!でも、いいの?」
「ああ、帽子なんか幾らでもあるからさ」
「そう、じゃあ、遠慮なく頂戴するよ」と言って豆粒大の醜い子は帽子を受け取り、喜んで被って一寸帽子となりました。
という訳で一寸帽子は元気が出て来て猶もてくてく歩いて行き、人間の通る道に出ると、向こうからとても可愛い娘が付き添いの小僧を引き連れて歩いて来ました。
一寸帽子はその娘に一目惚れしてしまいましたが、小さいなりの所為で娘は彼に一向に気付かずに通り過ぎてしまいました。
だから一寸帽子は気づいてもらおうと目一杯、声を張り上げて、「おーい!お嬢さん!僕を見てください!」と叫んで一生懸命両手を振ると、振り向きざま目ざとく気づいた娘が物見高さも手伝って一寸帽子のいるところへ急いでやって来ました。
「うわあ!とんでもなくちっちゃい!而も身なりがぼろぼろでとっても気色悪い!おまけに似合いもしないのに帽子なんか被っちゃってもうやだー!気味が悪いわ。ねえ、小僧、見てよ、これ!蚤の乞食の化け物よ!」
小僧は娘の後から来て言いました。
「うわあ!ほんとだ!おいらより全然ちっちゃくて醜いや!」
「でしょ、お前もチビとか下種とか言われて馬鹿にされるけど上には上があるものね!」
「全くです」
「全く気持ち悪いわ!もう、とんだ道草食っちゃった!さあ、小僧、こんなちんちくりんの貧乏妖怪とは早くおさらばしましょうよ!」
「へえ!」
残された一寸帽子は心臓を氷柱で突きさされたように心が傷ついて痛んで冷え冷えとなりながら、その場にへたり込み、情けなさの余り、泣き崩れてしまいました。
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