44人が本棚に入れています
本棚に追加
それから少しして、私はまたバラスを抜いた五竜を集めた。
「やはり、私の気のせいではなかった」
「というと?」
私の横にいるナイアが、聞き返してきた。
「バラスの事だ…とある国に余計な力と知識を与え、国を大きくしている」
「それは…」
「この地域のバランスが大きく崩れる!」
「それはいかんな」
ナイアは、大きなため息を付いて私を見る。
「それに、奴は我々の掟をどうやら破ったようだ」
「まさかッ!?」
急にヴォルグが声を荒げた。
「人と竜の混血を産み出そうとしている」
「それは本当かっ!?」
「えぇ、ヴォルグ…バラスの部下がそれをやろうとしているのを、私の部下が聞いたそうよ?」
「バラスは部下を人化させる気か?」
ナイアは冷静に聞き返す。
「えぇ、じゃないと人と竜は交じあうことが出来ないからね…」
一つのため息の後、私は続けて口を開く。
「人化すると二つのリスクがうまれる…一つは、人化した竜は、二度と竜には戻れない…」
「もう一つは混血児…か?」
ナイアが私の代わりにもう一つのリスクを口にした。
「混血児は、邪悪な者にもなり得る…人間達からすれば脅威の存在となる」
そして国のバランスも大きく崩れてしまう…余計な力と知識を与え、なおかつ混血児となると、もうどうなるか私にもわからない。
私の“脅威の存在”の一言で皆それを察し、沈黙が流れた。
「俺は阻止する!」
急にヴォルグが声を上げた…それにつられ、ブレイズ、ナイア、ドゥームが次々に声を上げた。
しかし、リュートだけは無言のままだった。
最初のコメントを投稿しよう!