突然の・・・

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土曜日 恭介さんと一緒に、母の御墓参りに行った 『君のお母さんに挨拶がしたい』と、恭介さんが自ら進んで申し出たのだった 電車に乗って、母の地元に向かった 田園風景と拓かれた街が合わさるその長閑な街で母は生まれ育ち、そこで眠っている 近くのスーパーでお供え物と可愛い小さな花束を買い、小高い山の上にある霊園に行った 母の命日が近いというのに、今年は誰も訪れていないようだった それは、毎年のことだった お盆もお彼岸も、私は時間を見つければ訪れているけれど、椎奈家の人間も母の家の親族の人も、来ていない それでも、毎年この時期に、誰かは分からないけれど1人だけ欠かさず来る人がいるようで、母の好きな花を集めた綺麗な花束だけが供えられていた だけど、今年はその人も来ていないようだった その人のことはいいとして、やはり椎奈の父が来ないのはどうかと思う それとも、もう新たな家庭を築いているし、来る理由がないから? 胸がもやもやし、切なくなるのを抑えて、恭介さんとお墓に向かって、手を合わせた ……お母さん、また来たよ 今日は好きな人と一緒に来たの 『森川 恭介』さんっていう人なの 一緒にいて、つい不安になるけれど、でもとても優しい人で、安心感を感じて、ずっと一緒に思える人 この人と、幸せになりたいって初めてそう思えたの 間違ってるかもしれないけれど、それでも……
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