新しいオフィス

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新しいオフィス

それは、桜の季節が終わって ツツジの咲く季節に 変わった時のことであった。 大阪のオフィス街に、 「フレンチカジュアル」の 新しい支店が誕生しようとしていた。 「フレンチカジュアル」の 新しいオフィスには、 オフィスの支店長兼課長として 配属となった長野英明、 営業部社員である岡島恭輔、 そして営業事務を担当する 多嶋雪恵が勤務することになった。 「いいですね、課長。 新しいオフィスは、 すがすがしいですね」 「そうだな、ある意味で 高槻から来たかいがあったな」 「これからが、勝負になって きますからね。課長も、岡島さんも、 頑張ってくださいね」 「さてと、早速だが多嶋くん。 このオフィスのオープンに向けて、 本社から営業部社員2名と 営業事務2名の募集をかけたが、 どうなっているのかな?」 「それでしたら、 本社の細川係長からの連絡で、 うちの営業部社員の面接の予定が 組まれているそうです」 「そうか、うちの支店に 新しい風を拭く人材であると いいんだがな。 ある意味で、恭輔の後輩として 働いてくれる人材だ。 恭輔、新入社員でもオッケーだよな」 「そうですね、新卒の社員は大歓迎です。 オレが、営業のイロハをたたきこんで いきますよ。かつての課長の時のように」 「心配なのが、ケガで入院している 吉永さんですね。 営業で一生懸命頑張っただけに、 足のケガで手術をすることに なったのが気の毒です」 このメンバーにはいないが、 営業部社員として働いている 吉永沙織がいる。 彼女は、現在足の手術で 入院を余儀なくされていた。 それは、彼女自身が慣れていない ハイヒールで営業をまわったことで 足が外反母趾になってしまったのだ。 「沙織は、必ず足を治して 職場復帰するだろう。 それまでは、恭輔と新しく来る 営業社員に頑張ってもらう。 オフィスは変わっても、 メンバーは変わっていない ところを沙織が帰ってきた時に 見てもらえればいいと思っている」 英明の言葉どおり、かつて高槻にあった オフィスにいた仲間がそろって 新しいオフィスに 入りたかったのがわかる。 そして、しばらくして 新しいオフィスに 営業部社員が2名決まった。 営業部社員は、2名とも 新卒での採用となった。 一人は、服部孝之。 もう一人は、早川香菜が 入社することになった。 孝之と香菜は、2週間の本社での 研修を受けてから、新オフィスでの 勤務が決まった。 そして、営業事務も1名決まった。 しかし、残る1名が空席のままであった。 営業事務に決まった川嶋夏子も、 孝之と香菜と同じ新卒での採用であった。 そして、空席となった 営業事務担当として 面接に来た女性がいた。 彼女の名前は、広瀬清香と言った。 清香は、短大を卒業して アパレルメーカーの営業事務を 4年間勤めていたベテランであった。 「フレンチカジュアル」でも アパレル業界で知られていただけに、 清香の仕事経験が面接の鍵となっていた。 そして、清香の面接の日が来た。 「初めまして、面接に来ました 広瀬と申します」 この時が、英明と清香の 初めて会った瞬間であった。 英明は、清香に 心を奪われたようであった。 この時の二人が、のちに夫婦となることを この時の英明は、知る由もなかった。
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