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いつからジュリアスは、こんなふうに思いつめた顔をするようになったのだろう。
ニューヨークにいたときは、別段スティーブとの間に割り込もうとはしなかった。
それは二人の関係に気付いていなかったわけではなく、二人の性格を見越したうえで、干渉しなかったということだろう。
アンドリューというスパイスが加わってから、彼の言動は少しずつ変わり始めている。従兄への秘めた想いは誰にも悟られない自信があったのに、ジュリアスは確かに勘がいいようだ。
「アンドリューとは、子供のころからの付き合いだから、いろいろあるんだよ」
「子供のころから知ってても、彼はあなたのことを理解していないよ。表面的な付き合いで、分かったような気になっているだけだ。僕だったらもっとあなたを理解してあげられる。いつもそばにいて、支えてあげられる。それから助けが必要なときには、救ってあげられる」
そんなことを他人から言われたのは初めてだ。今まで誰かに救ってもらうような境遇にいたことは一度もない。
「あなたは自分で思っているほど、強い人間じゃない。そうやって壁を築いて心を閉ざす前に、何でも話してみてよ。僕ができることなら何でもする。僕ができないことでも、とりあえず言ってみて。話すことで案外気が済むかもしれないでしょ。何でもかんでも自分一人の胸にしまい込まないで」
少年の真摯な眼差しに、ロバートは微笑み返した。
「ありがたい申し出だけれど、君の考えすぎだよ。私には何の問題もない」
今までそうやって生きてきた。
これからもそうして生きていくしかない。
ジュリアスが、不満げな表情を浮かべた。
呆れたように大きなため息をつく。
「どうして僕が、今ここにいるか分かる? 気まぐれで冗談みたいなあなたの提案に、何故あのとき同意したか分かる? あなたとずっと一緒にいたいと思ったからだよ」
確かに彼は当初、留学話にあまり関心を示さなかった。ロバート個人には興味を抱いているようだったが、いつも一定の距離を保っていて、その様子はどちらかといえば観察に近かった。
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