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「あなたは不思議な人だと思った。こんなに華やかで綺麗な外見をしているのに、中身はとても醒めている。悟りをひらいた仙人か、人生を諦観した老人みたいに、今にも儚く消えてしまうんじゃないかと心配になった。
あなたはすぐに、僕の気のせいだとか考えすぎだとか言うけど、誤魔化そうとしても無駄だよ。だって僕はずっとあなたを見つめているんだもの。寝ても覚めても、あなたのことばかり考えているんだもの。僕はあなたを愛しているんだ」
唐突で素朴な愛の告白に、ロバートは驚いた。
口説かれたことは多々あるが、こんなにムードもデリカシーもない求愛は初めてだ。
夏の太陽はまだまだ空高く、夕暮れにはほど遠かった。泥だらけの車の横で、自分の肩ほどの小柄な少年を見下ろす。
「最初のころ、私は君に嫌われているのだと思ったよ。スティーブとの間に、割り込んでしまったようだから」
「ううん、そんなことない。彼が連れてきたのは、あなたが初めてじゃないし」
話をそらしたロバートに、少年はもどかしそうな表情を見せた。
「留学にも、気が進まないように見えたけど?」
「だってあなたの本心がどこにあるのか、分からなかったから。あなたが僕を誘ってくれたとき、本当はすごく嬉しかった。ただの気まぐれやジョークでなければいいと思った。僕は本気で、この人とずっと一緒にいたいって思ったんだ」
あのときの衝動は、今でも説明がつかない。
愛だの恋だのという、特別な感情からではなかった。
夏休みで開放的な気分になっていたとか、外国に行って気が緩んだとか、その程度の問題だ。
たまたま目の前に毛色の変わった猫がいて、可愛かったので、拾って家に連れ帰った。
それくらいの軽い気持ちだった。
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