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§レオナード~Leonard
ジュリアスの嫉妬心を知ってか知らずか、アンドリューはそれからも頻繁に屋敷を訪れた。
彼の実家はハムステッドにあって、学生寮で一緒だったときを除けば、今までで一番住居が近くなったせいでもある。
「うちの母親がびっくりしていたよ。お前が留学生の面倒をみるなんて意外だったらしい」
山ほどあった焼き立てのスコーンは、アンドリューとジュリアスの胃の中に収まった。苺やブルーベリーのジャムは、ロバートの母親が作ったもので、昔からアンドリューの好物だ。母親同士が姉妹なので、二人の味覚は似ているのかもしれない。
「エレインもそう言っていたね。私はそんなに人付き合いの悪い、冷たい人間だと思われているんだろうか」
「いやいや、そうじゃない。むしろ逆だ。お前は真面目なうえに世間知らずだから…」
自分の失言に、アンドリューは慌てて口をつぐんだ。それから悪戯が見つかった子供のように、バツが悪そうな笑顔を見せる。
「要するに君は、そういう理由でジュリアスを探りに来ているわけか? 私が変な友達に騙されたり、利用されたりしていないか、伯母上が調べてこいと?」
ロバートは目を細めて言った。
「いやー、別に俺はスパイとして送り込まれているわけじゃないんだ。ただ最初の噂が恋人出現ってことだったから、みんなとても心配しててさ。入国審査のときに、お前が外国人の列を心配そうに見つめていたとか、迎えの車に美女の手を取って乗り込んだとか、いろいろと情報が錯綜したわけだよ」
アンドリューは頭をかきながら言った。
「そいつはどうやら、目が悪くて、ついでにずいぶんと頭も悪いらしいな」
「うーん、名前は明かせないが許してやってくれ。ジュリアスは髪が長くてほっそりしている。遠目で見たら女の子に見えるし、二人があまりにも楽しそうで、周りが全然目に入らない様子だったから、これは一大事だと思ったらしいんだ」
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