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少年はほかの人間には目もくれず、ロバートに抱きついた。
華やかで強烈なオーラが周囲を圧倒する。ほっそりした背格好は、並ぶとロバートによく似ていた。
美しく整った顔立ちに、ふわふわとした栗色の巻き毛。子供とも大人ともいえない微妙な年齢に、性別を超えた色香が加わって人目を引き付ける。
もしも彼が舞台俳優なら、間違いなく主役クラスの華があった。
「ああ、レオナード。どうやってここまで来たの? お父さんの仕事の都合で?」
「ううん。一人で来たんだ。だって旅行から帰ったら電話してくれるって言ったのに、全然連絡がなかったんだもん。僕はずっとずっと待ってたのに。それでパリにはいつ戻ってくるの? それとも夏休みだからほかのところへ行く?」
「いや、私はどこへも行けないんだ。ここでいろいろと用事がある。私の従兄と、預かっている留学生を紹介するよ」
少年は振り返って、唖然としているアンドリューとジュリアスを、その存在に初めて気が付いたように一瞥した。
それから視線を一巡させて、改めてジュリアスに目を止める。表情豊かな大きな目が、敵意できらめいた。
「ジュリアスはアメリカからの留学生、アンドリューは従兄だ。こちらは…」
「誰、これ? 代わりがいるから、僕はもう用済みってわけ? だから会いに来なかったの?」
レオナードが話を遮って叫んだ。
「いや。彼らとは、そういう間柄では…」
「別にあんたが誰と付き合おうと、文句は言わないよ。だってあんたはほかの大人たちとは違うもの。たとえ浮気をしたって、僕のところに戻ってきてくれるならいいんだ。そんなことくらいでいちいち、僕は怒ったりしない。だって僕はあんたにとって、特別な人間なんだものね?」
すがりつくレオナードに、ロバートはきっぱりと首を振った。
「いや。彼らは、君が想像しているような関係ではないんだ。それにはっきり言って、私と君との間にも、特別なことは何もない」
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