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僕が小学四年生になったとき、若い女の先生が担任になった。
「放課後、教室に残って」
先生からいわれたとき、僕はきっとまた、おこられるのだと思った。
先生は教室で二人きりになるとノートを取り出し、
「嘘がつきたくなったら、このノートに書いてみたらどう? それをずっと貯めておくの。きっと宝物になるはずやわ」
とおっしゃった。
「僕の嘘が、宝物?」
僕は思わず、ききかえしていた。
「そう、宝物よ。いつか、きっと宝物になるはず。嘘はノートだけに書いて、毎日、先生に見せて」
先生は僕の目をしっかりみつめて、ニコリと笑われた。
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