帰る場所

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「ありゃりゃ。真志喜のやつ、すっかりベッタリだな」 ようやく迅は退院することができ、本邸へ戻って来た。 そんな中、周りは退院を祝う一方で、珍しいものを見るように迅を眺める。 正確には迅と、迅にくっ付いて離れない真志喜を、だ。 まだ真志喜が迅にしか心を開いていなかった頃のように、迅の服をキュッと掴んで後ろを付いて行く真志喜。 昔からいる人間には見慣れたものだが、榎本たちのような新人には衝撃の光景だった。 正嗣が面白がってケタケタ笑う横で、清はやれやれと苦笑いを浮かべる。 「一体どうしたんだか。これじゃまるで、昔に戻ったみたいですね」 「えぇ。なんだか懐かしいです」 そう微笑ましげに笑った西倉は、一緒にいた娘のマイに手を引かれる。 「ねーねー。真志喜くん、迅さんにベッタリなの?」 「うん、そうだよ。真志喜くんは甘えたさんなんだ」 周囲から視線を浴びる中、迅は動揺しながらも幸福感で満たされていた。 後ろをトテトテと付いて歩いてくる真志喜に、堪え切れない口の緩みを手で隠す。 か、可愛すぎる…っっ。 少しイタズラ心が芽生えてすぐ側の真志喜に手を伸ばし、プニっと頬を摘んでみた。 いつもならすぐに拳か蹴りが飛んでくるのだが、今回はただされるがままになっている真志喜。 正直、死ぬほど可愛い。 そうそう。 昔はこんな風に全然喋らなくて、何を考えてるのか分からない感じだった。 でも俺のことを必要としてるってことだけは痛いほど伝わってきて。 それだけ今回のことは、真志喜には堪えたのかな。 我慢できず両手でその頬をうりうりしながら、ふと思う。 俺の前で真志喜があんなに泣いたのは初めてだった。 まるで自分の全てを曝け出すように涙を流し、それから今みたいに全然離れたがらなくなって。 まぁ何はともあれ、この機を逃す手はない。 思う存分、好きにさせて頂こう。 久しぶりにお風呂でイチャイチャしようと、迅はついに隠すこともせず、その顔を緩ませまくるのだった。
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