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携帯から流れる音声に、あたしは電話を切った。
何度かけたって答えはおなじなのに、かけてしまう。前みたいに電話に出てくれて他愛のない話ができるものだと思っているのに。
今も覚えている聞き慣れた声が、耳にしつこく絡みついたようで中々離れてはくれない。
自然と彼のことを思い出しては涙が頬を濡らしていく。思い浮かべるのは彼のこと。
もう繋がらないことくらい理解しているのだけれど、心が納得してくれなかった。
携帯電話をベッドに荒々しく放り投げた。
携帯電話は役目を果たせずに、隅っこに追いやられて寂しげに見えたけど気には留めない。
机の上に置いたカレンダーに目線を向ければ、赤い丸で囲まれた7という数字。
もうすぐ、七夕か…。
今年もそんな時期なんだね、と一言誰にも聞こえるはずないのに言葉を漏らした。
あたしはゆっくりと立ち上がりベランダのほうにある笹に目を向けた。
風が笹の葉をまだ願いを描いた紙がつるされていないよと寂し気に揺れさせる。もう去年の今頃なら、笹は飾りつけされていたのに…。
毎年、七夕の夜には決まってあたしの家か健一の家のどちらかのベランダに笹を飾って二人で短冊に願いを書いていた。
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