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この先に何が?
『質問してよいでしょうか?』
と言いかけて言葉を飲んだ。ここは堪えて、知りうる限りの真実を知ることが先だと考えた。
次に某ノーベル賞受賞者が映し出される。
「しかし近年は、もっと効率のよい肉類の増産が可能になりました。ご存じの通りips細胞の研究は世界でもトップスラスの日本ですが、医療分野における研究以上に進展を見せているのは、食料の生産分野です。」
急に動画が終了し、部屋に5人の大柄な男性が入ってくる。
「ご案内致します。」
彼らに囲まれ長い廊下を進むと先程とは別のエレベーターがあり、そこからさらに相当深く地下に下降する。
ドアが開いた先は、ほぼAI化された食肉加工工場になっていた。そこを通過し、奥にあるエレベーターで、さらに降下する。いったい、ここは地表からどのくらいの位置にあるのだろう?
エレベーターの扉が開いた時、妙な匂いが鼻に着く。すぐ近くにあった部屋へ入ると、5人の男たちは防護服を取り出す。俺も同じ防護服に着替え、大げさなマスクも被せられた。バイクのフルフェイスヘルメットのように、すっぽりと被るもので高性能の空気清浄機能が搭載されていると一人の男は説明した。靴も手袋も用意されており、まるで宇宙空間にでも飛び出せるほどの手の込んだ装備に身を固め、俺たちは長い廊下を進んだ。
途中、要所要所で分厚い金属の扉を開閉し、先へ先へと進む。彼らに従わなければ生きて地上に戻ることは不可能であると実感する。
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