アラタ 身長170cm・体重88kg  12歳

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アラタ 身長170cm・体重88kg  12歳

 次に採用予定の小学校の校長が俺に語り掛けた。 「あなたは教員採用試験の勉強をしていらっしゃると思いますが、ウチの学校での仕事は試験勉強に役立つものではありません。実は、申し上げにくいのですが、非常に体の大きい気性の荒い男子児童の世話、いや管理をお願いしたいのです。私の息子です。アラタと言います。アラタは4月から6年生になりますが知能は小学1年程度です。言語能力はもっと低いかもしれません。今まで私自身が体を張って息子に関わってきましたが、もはや私の体力では彼を制することが難しくなりました。他の施設へ入所させることも考えましたが、せめて小学校を卒業するまでは家族と生活させてやりたいんです。どうでしょう。お願いできますか?」  誠実そうな校長の目には、うっすらと涙が滲んでいた。 「はい。頑張ります。よろしくお願い致します。」 俺は、校長の真っすぐで切実な眼差しに、人間として応えたいと思った。  その小学校は市街地から38キロ離れた山奥にあった。 俺の他には校長と教頭しかいなかった。生徒は1年生のユキナ、4年生のミク、6年生のアラタの3人。  俺は6年生のアラタの担任という立場の監視役だった。アラタは身長170センチ体重88キロという巨体で、病的なまでに感情の起伏が激しい子どもだった。ユキナとミクの安全と安心を確保するため、彼女たちが下校するまで俺は1秒たりともアラタから目を離せなかった。俺自身がトイレで用を足す時にも、アラタを一緒に個室まで連れ込むほど気を遣った。
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