鏡の中の

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「いけない、もうこんな時間。初日から遅刻しちゃう」 わたしは飲み終えた薬の空き瓶を片付けると、朝食の席についた。 博士はもう食べ始めている。 博士は、長いことわたしたちの種族を研究している科学者だ。 難しいことはよくわからないけれど、その道ではかなり有名らしい。 親とはぐれて一人ぼっちだったわたしを引き取って育ててくれた、恩人だ。 まあ、研究対象として、ということだったんだろうけど、たくさんの愛情も注いでくれた。 「いただきます!」 わたしはバナナをモクモクと頬張り、コーヒーで流し込んだ。 「よし、もう行かなきゃ!」 慌てて立ち上がるわたしの手を、博士が優しく引いた。 「今日から学校だね。ちゃんとやれそうかい?」 「うん、任せて! 勉強の予習もしたし、しぐさや友達との話題、最新のトレンドまで全部覚えたから、すぐに周りに溶け込めると思うよ。博士、あんなにたくさんの情報をまとめてくれてありがとう!」 「そうかい、それは良かった。……ああ、悪いんだけど、帰ってきたらレポートを書いてもらえるかい? いつか研究としてまとめたいからね」 「はあい、わかりました! それじゃあいってきま~す」 博士にはああ言ったものの、本当はちょっと不安だ。 「学校」で「友達」…できるかな。 情報は頭に叩き込んだから、疑われることはないと思うけど、そもそもわたしは「友達」を作ったことがないのだ。 小さい頃同じ種族に会ったことはあるけど、同年代の子はいなかった。 わたしたちの数はどんどん減っているから仕方ないけど…。 だからわたしは友達の作り方を知らない。 どうやって「友達」を作ればいいの? どうやって休み時間に話をすればいいの? そこがちょっと不安要素だ。
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