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「一応断っておくけど、さっきの彼、私は結構タイプだったんだ。貰っちゃってもいい?」
「別にわたしに断らなくても、わたしの彼でもなんでもないし」
「そう、じゃあ頂きっ」
キュッと口角をあげた菫の方がよっぽど小悪魔っぽいが、それは口に出さないほうが賢明だろう。
「はぁ、菫ちゃんもよく飽きないね。私は無いわー」
芹香が呆れたような声を出した。
「何言ってるのよ。人生は一度きり、楽しまなくっちゃ」
かつての華音とは違った意味で、自分が一番、自分を中心に世界は回っていると思っているのが菫だった。
一見して仲が良さそうなブロッサムズだが、その3人の力関係は微妙なバランスの上に成り立っている。
3人の中で一番財力がある親を持っているは菫。
目鼻立ちのハッキリしたハーフ顏、上から下までブランド物で武装している様は、25an○の1ページから抜け出てきたよう。
その名である菫よりは、真紅の大輪の薔薇が似合うような華やかな女性だ。
見た目通りの女王様気質に加え、気になる男子を見つけると、つまみ食いしては捨てを繰り返す、超肉食系。
地元では知らない人はいない有名企業の社長令嬢、音大ではありふれている経営者の子女の中でも別格の存在と目されている。
大学への送り迎えは運転手付のリムジン、目立つことこの上ない。
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