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田舎出身だから、都会に出て流行を追ってたわけじゃないんだ、と澪は言う。
「いつかきっと、僕が贄に選ばれる日が来る気がしてて。だから、そんな古い因習から逃げ出そうと必死になって」
「澪は毎日、そうやってクチナワサマの恐怖と戦ってたんだな……」
蒼大は、澪の細い両肩をしっかり掴んだ。
「俺も行く。クチナワサマに会って、澪を連れていかないように説得するぜ」
その言葉に、澪は目を丸くした。
「そんな! クチナワサマに逆らうなんて!」
「逆らうんじゃない。お願いするんだ」
無理だよ、と澪は泣いた。
「贄が戻ってきた前例なんか、無いんだから」
「じゃあ、澪がその第一号になればいい」
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