クチナワサマによろしく【差分】

6/37
前へ
/37ページ
次へ
 人気のテーマパークへ出かけ、新しいアトラクションに二人は並んだ。  二時間待ちの、長蛇の列だ。  30分で、蒼大は音を上げた。 「なぁ、他のもっと人の少ないアトラクションに移動しようぜ」 「もう少しだから! きっと、待つ甲斐あるから! 絶対、面白いから!」  蒼大を退屈させまいと、澪はいつもの3倍お喋りになった。 流行の音楽、話題の映画、最新のゲーム。 「な、澪。俺の聞きたい話、喋ってくれるか?」 「いいよ。何なに?」  お前のことが、知りたい。 「実家はどこか、小さい頃に何して遊んでたか、なぜ県外からうちの学校を選んだのか、とかさ」  そういう、お前のことは、俺なんにも知らないから。  それには、澪はとたんに口ごもった。 「周りに人がいるから、ちょっとイヤだな……」  列がわずかに進み、この話題はここまでになった。  澪はやはり、トレンドについて喋るだけだった。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加