01.escape

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「四面楚歌ってか…」 どうせ後ろからも来ているだろうから、振り向かず横の細い抜け道を選ぶ。 瓦礫を飛び越え、水溜まりを蹴っていく。泥がズボンの裾に跳ねても、それを気にする余裕など無い。 追いかけられることに慣れている、というのはおかしいが、少なくともこの緊張感を味わったことは何度もある。 暗殺課諜報員という仕事は、危機に晒され続けるものだ。だからといって、好きで事件に巻き込まれたりしている訳では無い。 「こっちだ」 「っは、!?──っんぐぅ」 突然手を引かれたと思えば、口元にガーゼを当てられて意識を失った。その早業に、何も抵抗ができなかった。 くそっ。これで終わりか…。 そこで死を、覚悟した。
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