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「四面楚歌ってか…」
どうせ後ろからも来ているだろうから、振り向かず横の細い抜け道を選ぶ。
瓦礫を飛び越え、水溜まりを蹴っていく。泥がズボンの裾に跳ねても、それを気にする余裕など無い。
追いかけられることに慣れている、というのはおかしいが、少なくともこの緊張感を味わったことは何度もある。
暗殺課諜報員という仕事は、危機に晒され続けるものだ。だからといって、好きで事件に巻き込まれたりしている訳では無い。
「こっちだ」
「っは、!?──っんぐぅ」
突然手を引かれたと思えば、口元にガーゼを当てられて意識を失った。その早業に、何も抵抗ができなかった。
くそっ。これで終わりか…。
そこで死を、覚悟した。
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